建設業の許可を取るためには、満たさなければならない要件があります。
そのうちの一つは、「建設業者として5年以上経営を行った経験があること」です。
そしてこの必要な要件は、書類でもって証明しなければなりません。
この記事では、建設業の経営経験を証明するために必要な書類について解説しています。
(記事作成:令和4年4月)
個人事業主のときの経営経験確認資料
個人事業主として建設業を行っていた場合、その個人は建設業の経営者と見なされ、個人事業としての建設業を5年以上行っていれば、建設業許可における経営経験を満足することになります。
5年以上個人事業として建設業を行っていれば、条件を満たすわけですが、許可申請においては、条件を満たすことを書類により証明する必要があります。
経営経験を証明するための確認資料としては、次のものが挙げられます。
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- 所得税の確定申告書の写し
- 契約書または注文書の写し
- 発注証明書
詳細は次のとおりです。
1.所得税の確定申告書の写し
毎年確定申告はしているはずですので、すべての個人事業主さんは、確定申告書の写しが経営経験を証明するための確認資料として使用することができるはずです。
ただし、条件が一つあります。
それは、職業欄に「建設業」の記載があるものに限られるということです。
建設業以外の事業も兼業で行っている場合、建設業ではなく別の事業の種類が記載されているという場合や、そもそも職業欄が空白になっている場合は、証明するための確認資料として認められません。
建設業の許可を取ろうとお考えの場合は、申告書の職業欄についても、申告時に気に掛けておきましょう。
職業欄に記載するのは、「建設業」でなくとも、建設業であることがわかる記載方法であればいいと思います。
例えば、塗装工事を請け負っている場合は「建築塗装業」、管工事を請け負っている場合は「配管業」などでもいいと思います。
29業種のうちのどれかに該当しているであろうことがわかる表現であればいいでしょう。
確定申告書の控えを保管しておらず、破棄してしまっている場合は、税務署で申請すれば、過去5年分は、発行してもらえます。
その場合1週間ほどかかることもありますので、余裕を持って申請しましょう。
この確定申告書の写しは、広島県の場合、申請の1年前、3年前、5年前のものを提出すればよいことになっています。
2.契約書または注文書の写し
確定申告書の写しが、証明書として使用できない場合は、建設工事の請負契約書、または請負工事の注文書の写しを提出する必要があります。
当然ですが、建設工事であることがわかるものでなければなりません。
請負契約書の締結は、建設業において義務とされており、書面で契約書を取り交わさなければならないとされています。
しかし、実態としては、契約書を取り交わしていないことはよくあるようです。
法令により、契約書に記載しなければならないことが規定されているため、これから建設業の許可を取ろうとする場合には、注意しておきましょう。
契約書がない場合、注文書の写しを確認書類として提出します。
注文書には、件名が建設工事であることがわかるようにすること、工期、工事現場等が必要です。
また、注文者の会社の印鑑が押されていなければなりません。
担当者の印鑑だけでは、確認資料として認められないので注意しましょう。
自身が下請の場合には、契約書や注文書を元請業者に事前に出してもらうように依頼しなければならないこともあるかもしれません。
個人のお客様からの依頼を受けるときには、自分で書類を準備して、お客様に署名と印鑑をもらうようにしておけばいいと思います。
これらの契約書や注文書を保管しておけば、許可取得の助けになるでしょう。
また、許可を取得した後も、しっかりと保管しておくことをお勧めします。
建設業許可における要件の一つに、専任技術者に関する要件があります。
専任技術者になろうとする人が所定の国家資格等を有していればいいですが、そうでない場合、実務経験が最大で10年以上必要になります。
その場合、実務経験を証明するための確認資料としても、契約書や注文書の写しを提出することができます。
専任技術者の変更や、追加等を行う場合に、必要になることもありますので、許可を取得した後も、契約書や注文書は、しっかりと保管しておきましょう。
契約書や注文書を経営経験の証明するための確認資料として提出する場合は、広島県の場合、申請の1年前、3年前、5年前の年度から各年工事1件分を提出すれば足ります。
3.発注証明書
確定申告書が証明書として使用できず、契約書や注文書もない場合には、発注証明書を提出します。
発注証明書は、発注者に記載してもらうものです。
発注者が契約書か注文書の控えを保管しており、それを借りることができればいいのですが、できない場合は、発注証明書しかありません。
広島県の場合、次のような様式になっています。
発注証明書を提出した場合は、立ち入り調査や、発注者(証明者)への確認を取ることがあるようなです。
5年前等相当時間が経過した工事について、契約書や注文書が残っておらず、口座への振り込みで代金が支払われていた場合は、それをもとに発注者やどのような工事であったか判明するかもしれません。
とはいえ、取引先にも迷惑をかけることになるので、なるべく発注証明書ではなく、確定申告書、契約書、注文書で申請できればそれに越したことはありません。
発注証明書の場合も、申請の1年前、3年前、5年前の年度の各1年につき1件分を提出すれば足ります。
法人の役員の場合の経営経験確認資料
建設業を営む法人の役員で会った時の経験を証明するという場合です。
経営経験を証明するためには次の書類が必要です。
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- 登記事項証明書
- 許可通知書
- 法人税の確定申告書の写し
- 契約書または注文書の写し
- 発注証明書
1.登記事項証明書
登記事項証明書により、必要な年数すなわち5年以上、役員であったことが確認できます。
法人の役員であった場合には、この登記事項証明書は必須です。
加えて、以下の2.以降のいずれか、または、2~5を組み合わて、必要な年数すなわち5年以上であること確認できるものを提出します。
2.許可通知書
以前、建設業の許可を取得していた法人で役員をしていた場合は、前の会社の建設業許可通知書の写しを提出します。
前の会社を退職したときに関係が悪化したということがなければ、この場合が一番楽ではないかと思います。
3.法人税の確定申告書の写し
個人の場合と同様で、事業種目欄に「建設業」であることが記載されている必要があります。
建設業以外に兼業事業があり、建設業以外の事業を記載している場合は、確認資料としては使用できませんので注意が必要です。
4.契約書または注文書の写し
これも個人事業の場合と同じです。
工事請負契約書は、取り交わしていないことがよくありますが、許可を取ろうとする場合には、取引先と話して、契約書を取り交わすようにしましょう。
そもそも、契約書を取り交わさない建設工事は違法になります。
注文書には、発注者が法人の場合、会社の印鑑が押印されている必要があります。
担当者の個人印では、確認資料として認められないので、注意しましょう。
5.発注証明書
許可通知書、確定申告書、契約書、注文書が用意できないときは、発注証明書です。
とはいえ、5年前の書類がないというのはあり得ることだと思われますが、1年前の契約書も注文書もないというのは、最悪の場合、法令違反だと疑われる可能性もあります。
ですから、許可を取ろうとする場合は、発注証明書は使わなくて済むように、契約書、注文書などを意識するように、法令順守の意識をより高めておいた方がいいでしょう
許可申請やその準備などは、建設業の本業ではなく、面倒でもあり、後回し、おざなりになりがちです。
本業に専念できるよう、申請手続きに関しては、当事務所にご依頼、丸投げしていただければ、対応させていただきます。
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