起業しようと思ったとき、法人で事業を行うか個人事業とするかの2つの選択肢があります。
法人で事業を行うことを選択した場合、株式会社と合同会社という2種類のいずれかを選ぶことがほとんどです。
2006年の法改正により新たに誕生した「合同会社」はあまり聞きなれないという方もおられるかもしれませんが、この記事では、株式会社と合同会社の違いについて解説しています。
(記事作成:令和4年3月)
株式会社と合同会社の違い一覧
株式会社と合同会社の違いを示したものが次の表です。
株式会社 | 合同会社 | |
所有と経営 | 原則分離 | 原則同一 |
出資者 | 株主 | 社員 |
出資者責任 | 有限責任 | 有限責任 |
役員任期 | 原則最長2年(条件を満たせば10年) | 原則任期なし |
代表者 | 代表取締役 | 代表社員 |
意思決定機関 | 株主総会 | 社員総会 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
設立時定款認証 | 必要 | 不要(作成は必要) |
設立登記の登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
詳細を見ていきましょう。
株式会社と合同会社の所有と経営について
株式会社は、資金を集めるために株式を発行し、その資金で会社の経営を行うという形態です。
このとき、資金を提供した方が会社の所有者であり、株主と呼ばれます。
そして株主により選出された取締役、代表取締役が会社の経営を行うという形態です。
すなわち、株式会社の場合は、会社の所有者と経営者が異なっています。
もちろん、所有者と経営者が同じ、つまり、株主が代表取締役になることも可能です。
非公開の中小企業はほとんどがこの形態(株主=経営者)であるように思います。
これに対して、合同会社は、会社の所有者と経営者が一致しています。
合同会社の場合、会社に資金を提供した出資者を「社員」と呼びます。
この「社員」は一般的に使われる従業員というような意味ではなく、出資者を社員と呼びます。
この出資者=社員に、会社の業務の執行権、決定権があり、株式会社と異なり、合同会社は、会社の所有と経営が一致しています。
複数の社員がいる場合、代表社員を決めることができます。
株式会社と合同会社の出資者について
株式会社の出資者は、株主と呼ばれます。
株主には出資の見返りとして、次のような権利を有します。
- 議決権:株主総会に参加し議決に加わる権利
- 利益配当請求権:配当金などの利益分配を受ける権利
- 残余財産分配請求権:会社の解散などに際して、残った会社の資産を分配して受け取る権利
会社の経営は、株主総会で選出された取締役が行うことになり、その選出に対して、株主は株式数に応じた議決権を有しています。
合同会社の出資者は、社員と呼ばれます。
社員が、経営者となり、経営の意思決定を行います。
原則として社員の議決権は出資比率に関係なく同じです。
株式会社と合同会社の役員任期について
株式会社の役員の任期は最長2年です。
ただし、非公開会社の場合は最長10年まで延長できます。
また、任期後、同じ方が役員を続けることも可能ですが、その場合でも重任登記が必要になります。
合同会社の場合は、出資者=経営者(社員)であり、任期はありません。
したがって、株式会社のように任期ごとに登記手続きを取る必要はありません。
当然のことですが、社員の変更や追加があるときは、変更登記が必要になります。
株式会社と合同会社の代表者について
株式会社の場合、代表者は株主総会や取締役会で選任され、代表取締役となります。
選任方法は定款で定めることができます。
代表取締役は取締役の中から選任されるため、任期があります。
また、代表取締役は一人でなければならないわけではなく、複数人でも構いません。
合同会社の場合は、代表者は代表社員と呼ばれます。
選任方法は定款に定め、社員の互選や社員総会で選任されます。
任期はありません。
株式会社と同様に、複数の代表者、代表社員をおくこともできます。
株式会社と合同会社の意思決定機関について
株式会社の意思決定機関は、株主総会です。
株主が保有株数に応じた議決権をもちます。
合同会社の意思決定機関は、社員総会です。
社員の出資額に関係なく議決権は同じです。
株式会社と合同会社の決算公告について
株式会社は、毎年決算終了後、公告をしなければなりません。
公告の手段は次の3つです。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 電子公告(会社のHP)
定款に、公告方法を記載し、その方法に従います。
官報に掲載する方法を選択している会社が最も多いのではないでしょうか。
公告は義務ですので、怠ると最大100万円の過料が科せられることがありますので注意が必要です。
合同会社には、広告の義務はありません。
株式会社と合同会社の定款について
株式会社設立時には、定款を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
合同会社は、定款の作成は必要ですが、認証を受ける必要はありません。
定款認証の費用は5万円以上かかるので、合同会社の場合は、その分設立費用を浮かすことができます。
また、記載事項にも違いがあります。
定款の内容に関しては次の記事もご確認ください。
株式会社と合同会社の設立登記時の登録免許税について
株式会社の設立登記における登録免許税は、最低15万円です。
金額は資本金により定められており、次のとおりです。
登録免許税=資本金×1000分の7 (※ただし、15万円に満たない場合は、15万円とする)
合同会社の場合は、最低6万円で、株式会社と同様に出資額により定められています。
登録免許税=出資額×1000分の7 (※ただし、6万円に満たない場合は、6万円とする)
株式会社と合同会社どちらを選べばよいか
合同会社を選択する場合の理由として挙げられるのは、
- できる限り少ない費用負担で会社を設立したい
- 将来にわたり家族経営で大きく手を広げるつもりはない
というような場合です。
費用に関しては、約14万円程度少ない負担で済みます。
株式会社を選ぶのは、
- 代表取締役という肩書が良い
- 取引先等からの信用が高い傾向がある
- 将来、外部からの出資を検討している
ということが考えられます。
合同会社は、最近増えてきているとはいえ、あまり一般的ではないので、信用性、信頼性が低くなるかもしれませんが、今後は変わってくるのではないでしょうか?
また、建設業許可等の許認可が必要な場合においては、株式会社でも合同会社でも差はなく、どちらが有利、不利ということはありません。
周りからのイメージを大切にしたい場合は、株式会社を選んでおけば間違いないと思いますし、そのようなことは関係ないということであれば、合同会社も十分検討に値します。
当事務所では、株式会社、合同会社ともに設立手続きの代行を承っております。
会社の設立の際は、お気軽にお声掛けください。
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