この記事では、法人における建設業許可申請や決算変更届に添付する財務諸表について説明します。

(記事作成日:令和4年3月)

建設業の財務諸表は、財務申告用の決算書を基に作成します。

ただ単に、数字を転記すればいいというわけではなく、税務申告用に作られた決算書を建設業許可用に作り替えなければいけない場合があります。

科目を変えなければならなかったり、建設業以外に兼業事業がある場合には、売り上げを区別しなければならない等の違いがあります。

 

また、記入する金額は、千円単位です。

千円未満については、切り捨て、切り上げ、四捨五入とどれでも構いませんが、全体で統一されていなければなりません。

一般的には、千円未満切り捨てで作成されることがほとんどですので、切り捨てを選択すればいいと思います。

合計金額の記載は、各勘定科目の千円単位の金額を合計した金額ではなく、円単位の金額を合計した額、つまり決算書にある金額を千円単位で記載します。

 

法人用の財務諸表としては、次の4種類があります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書(完成工事原価報告書含む)
  • 株主資本等変動計算書
  • 注記表

これら財務諸表を申請する事業年度の直前の事業年度、つまり決算が確定している年度について作成します。

 

個人事業の場合の財務諸表に関してはこちらの記事をご確認ください。

 

 

貸借対照表

法人用の貸借対照表の様式は次のリンクを参照してください。

法人財務諸表_貸借対照表  (クリックでを表示します)

まずは決算書の資産の部から、流動資産、固定資産、繰延資産へ転記します。

注意点は次のとおりです。

流動資産

決算書の「売掛金」を「完成工事未収入金」に転記する。ただし、建設業以外の兼業事業がある場合は、建設業の売上のかかる売掛金を完成工事未収入金とし、兼業事業の売掛金は「売掛金」の科目で分けて記載します。

「材料貯蔵品」「短期貸付金」「前払費用」は、その金額が資産総額の100分の5以下である場合は、「その他」に含めて記載することができます。

 

固定資産

固定資産は、取得金額、減価償却累計額、期末簿価を記載します。

決算書には、期末簿価しか記載されていない場合があるので、「税務申告書別表16」から転記します。

固定資産には、「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3種類ありますが、すべて別表16を参照し、記載します。

 

次に負債の部です。

流動負債

決算書に「買掛金」がある場合は、建設工事に関するものは「工事未払い金」、その他の兼業事業に関するものは、「買掛金」に分けて記載します。

 

固定負債

基本的には決算書からそのまま転記できる場合が多いです。

 

最後に純資産の部です。

純資産の部

ここも、決算書からそのまま転記すればよい場合が多いです。

 

最後に、資産の部の合計と負債+純資産の部の合計が一致していることを確認します。

一致しない場合は、どこかに間違いがあるはずなので、十分確認しましょう。

 

損益計算書と完成工事原価報告書

法人用の損益計算書と完成工事原価報告書の様式は次のリンクを参照してください。

法人財務諸表_損益計算書と完成工事原価報告書  (クリックでPDFが表示されます)

作成における注意点は次のとおりです。

売上高

建設工事の売上高は「完成工事高」に、建設業以外の売り上げがある場合は「兼業事業売上高」に記入します。

「完成工事高」と「兼業事業売上高」の合計は税務申告の決算書の「売上高」と一致します。

完成工事高は、建設業許可申請の「直近3年の各事業年度における工事施工金額」の直近の事業年度の合計金額と一致しているはずです。

異なる場合は、いずれかに間違いがあるはずですので、修正が必要です。

 

売上原価

建設工事に関わる完成工事高に対応する原価を「完成工事原価」に記入し、兼業事業に係るものを「兼業事業売上原価」に記入します。

「完成工事原価」と「兼業事業売上原価」の合計は、税務申告の決算書の「売上原価」と一致します。

 

売上総利益

「売上高」から「売上原価」を差し引いたものが「売上総利益」です。

税務申告の決算書の売上総利益と一致します。

 

販売費および一般管理費

税務申告用決算書の「販売費および一般管理費」から転記します。

税務申告用の決算書に記載された科目が、建設業許可の損益計算書にない場合には、科目を修正、追加して記入し、すべての費用が計上されるようにします。

 

営業利益

「売上総利益」から「販売費および一般管理費」を差し引いた額を記入します。

税務申告用決算書の営業利益と同じ数字になります。

 

営業外収益、営業外費用

税務申告用決算書の「営業外収益」、「営業外費用」から転記します。

必要に応じて勘定科目を追加して記入します。

 

経常利益

「営業利益」+「営業外収益」ー「営業外費用」 の額を記入します。

税務申告用決算書の経常利益と同じ数字になります。

 

特別利益、特別損失

税務申告用決算書の「特別利益」、「特別損失」から転記します。

税務申告用決算書をそのまま転記する場合が多いでしょう。

 

税引前当期純利益

「経常利益」+「特別利益」ー「特別損失」 を額を記入します。

税務申告用決算書の税引前当期純利益と同じ数字になります。

 

法人税、住民税及び事業税

税務申告用決算書の「法人税、住民税及び事業税」から転記します。

 

当期純利益

税務申告用決算書の「当期純利益」から転記します。

これが利益から税金を差し引いたこの期の最終的な儲け金額になります。

 

完成工事原価報告書

税務申告用決算書から転記できる場合が多いでしょう。

「材料費」は、税務申告用決算書の製造原価報告書の「材料費」を転記します。

「労務費(うち労務外注費)」は、工事現場の職人さんの人件費で、人手を外注した場合の労務費が労務外注費として記載します。

「外注費」は、下請等に外注した費用で、労務費+材料費なども含めた契約した金額になります。

「経費(うち人件費)」は、上3つに含まれない費用です。

上記の合計が完成工事原価となり、損益計算書の「完成工事原価」と一致します。

一致しない場合は、どこかに間違いがあるので見直しましょう。

 

株主資本等変動計算書

法人用の株主資本等変動計算書の様式は次のリンクを参照してください。

法人財務諸表_株主資本等変動計算書  (クリックでPDFが表示されます)

決算書の株主資本等変動計算書をそのまま転記します。

様式が異なることもあるので、どの数字をどこに転記するか間違わないように注意しましょう。

 

注記表

法人用の注記表の様式は次のリンクを参照してください。

法人財務諸表_注記表  (クリックでPDFが表示されます)

注記表については、多くの項目がありますが、一般的な中小企業の場合、非公開会社で株式譲渡制限会社であると思います。

株式譲渡制限会社の場合は、記載不要の項目が多いので作成が容易です。

全18項目のうち6項目のみ記載すればいいことになっています。(次表:〇記載必要、×記載不要)

  株式会社 持株会社
会計監査人設置会社 会計監査人なし
公開会社 株式譲渡制限会社
1 継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況 × × ×
2 重要な会計方針
3 会計方針の変更
4 表示方法の変更
5 会計上の見積りの変更 × × ×
6 誤謬の訂正
7 貸借対照表関係 × ×
8 損益計算書関係 × ×
9 株主資本等変動計算書関係 ×
10 税効果会計 × ×
11 リースにより使用する固定資産 × ×
12 金融商品関係 × ×
13 賃貸等不動産関係 × ×
14 関連当事者との取引 × ×
15 一株当たり情報 × ×
16 重要な後発事象 × ×
17 連結配当規制適用の有無 × × ×
18 その他 〇 

決算書の注記表を確認し、記載していきます。

上表の〇の項目でも、該当がない場合は、「該当なし」と記載し、×の項目は記載不要です。

 

建設業の許可申請、更新申請、決算変更届、経営事項審査等、建設業に係る手続きならなんでも承りますので、お気軽にご連絡ください。

 

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