この記事では古物商として営業していくにあたり、守らなければならない基本的なルールを解説しています。
(記事作成:令和4年4月)
古物商の営業が許可制で規制を受けているのは、盗品等の売買の防止、速やかな発見、窃盗等の犯罪の防止を図り、その被害を迅速に回復させるためです。
この目的のため、古物商を営むためには、次のような守らなければならないルールが規定されています。
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- 管理者の選任
- 営業場所の制限
- 許可証の携帯義務
- 標識の掲示義務
- 取引の相手方の確認
- 取引の帳簿への記録の義務
- 帳簿の備え付けと保存の義務
- 不正品の疑惑の申告義務
- 警察への捜査の協力義務
- 名義貸しの禁止
管理者の選任
古物商許可を取得し、営業を行うためには、営業所ごとに管理者を選任しなければなりません。
管理者を選任する目的は、その営業所における古物商の業務を適正に行うためで、管理者は営業所の責任者であるといえます。
そのため、管理者は営業所に常駐していなければなりません。
常駐していないと管理者としての責任を果たすことができないということです。
したがって、管理者の住居と事務所の距離が、通勤できるとは思えないほどあまりに離れていると、管理者として認められない可能性があります。
管理者になるために特別な資格は必要ありませんが、古物商許可申請者や法人の役員等と同様に次のような欠格要件に該当しないことが求められます。
- 未成年者
- 心身の故障により古物商の業務を適正に実施することができない者
- 破産者で復権を得ない者
- 禁固以上の刑に処せられ、5年を経過しない者
- 許可を受けないで古物商の営業を行い罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者
- 窃盗罪、背任罪、遺失物横領罪、盗品譲受罪で罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者
- 暴力団及び暴力団関係者
- 住居の定まらない者
- 古物営業法に違反し許可を取り消され、5年を経過しない者
申請者が他者を管理者に選任する場合、しっかりと上記を確認し、信頼できる人を選びましょう。
また、管理者には、取り扱う古物が不正品であるかどうかを判断する能力も求められます。
そのため、古物商は管理者に対して、取り扱う古物に関する知識、技術、経験を取得させるように努めなければなりません。
特に、自動車、バイク、原付に関しては、3年以上の実務経験、講習の受講等が努力義務として挙げられています。
自動車関連の講習会としては、次の団体が講習会を開催していますので、該当する場合は積極的に参加してみてはいかがでしょうか。
- 一般社団法人日本自動車査定協会
- 一般財団法人日本中古自動車販売協会連合会(各都道府県中古自動車販売協会)
営業場所の制限
古物商は、自身の営業所と取引の相手方の住所以外の場所で古物の買取をしてはいけないことになっています。
この取引相手は、「古物商以外のもの」とされているため、古物商同士の取引であれば、場所の制限は受けないことになります。
ただし、「行商する」古物商に限られます。
許可申請時に「行商しない」と申請していた場合は、自身の営業所以外で古物の買取をすることはできません。
盗品、不正品を仕入れない、仕入れてしまった場合でも仕入れ先を明確にしておくことが求められ、そのために営業場所の制限が定められています。
自身の事務所と取引相手の住所以外に、買取ができる場所として、古物市場があります。
古物市場はには、古物商だけが参加できます。
参加者が古物商だけに限定されているため、取引の安全性が確保されていると言えるでしょう。
許可証の携帯義務
古物商が行商をする場合には、許可証を携帯しなければなりません。
行商というのは次のような場合をいいます。
- 取引相手の住居に出向いて取引
- 古物市場での取引
- 中古自動車等の訪問販売
- デパート等の催事場での販売
- 公園等での露天における販売
上記のような場合には、許可証を携帯しなければなりません。
携帯する許可証は原本である必要がありコピーでは不可です。
違反した場合は、10万円以下の罰金が科せられますので注意しましょう。
法人の場合、従業員が行商を行うことがい多いでしょう。
その場合、行商を行う従業員は、行商従業者証を携帯しなければなりません。
従業員の違反でも、10万円以下の罰金が科せられますので注意しましょう。
行商従業者証は、次のようなものでなければなりません。
- 材質は、プラスチックまたはこれと同等以上の耐久性を有するもの
- サイズは、縦5.5cm、横8.5cm
- 表に行商する従業員の顔写真(縦2.5cm以上、横2.0cm以上)を貼り付け、氏名、生年月日を記載
- 裏面には、古物商の氏名(名称)、住所、許可証番号、主として取り扱う古物の区分を記載
この行商従業者証は、防犯協会等で購入できますし、様式を満たしていれば、自身で作成したものでも構いません。
標識の掲示義務
古物商は、営業所の見えやすい場所に標識を掲示しなければなりません。
営業所が複数ある場合は、すべての営業所に標識が必要です。
標識には次のような定められた様式があります。
- サイズは、縦8cm、横16cm
- 材質は、金属、プラスチック、またはこれらと同等以上の耐久性を有するもの
- 色は、紺色地で文字は白色
- 記載事項は、許可を受けた公安委員会名、許可番号、主として取り扱う古物の区分(〇〇商)、古物商の名称又は氏名
入手先は、次のようなところです。
- 各都道府県の防犯委員会
- 標識製作業者(ネット通販含む)
- 公安委員会が定めた団体
ネットで業者に依頼する場合は、法令で定められた様式に合致しているかどうかしっかりと確認して依頼するようにしましょう。
取引の相手方の確認
最初に書きましたが、古物商営業の規制は、犯罪の防止と被害の迅速な回復が目的です。
そのため、取引相手、とくに仕入れの場合の取引相手については、その素性を明確にしておく必要があります。
ですから取引相手の確認は、非常に重要なものですから、その内容をよく理解して適正に行わなければなりません。
取引相手の確認は次のような場合に行わなければなりません。
- 古物を買い受けるとき
- 古物を交換するとき
- 古物の売却、交換の委託を受けるとき
確認しなければならない取引の相手方の情報は次のとおりです。
- 氏名
- 住所
- 職業
- 年令
職業については、会社員とか自営業ではなく、具体的に、勤め先や屋号を確認しなければなりません。
次の場合には、例外として、確認義務は除外されます。
- 取引の対価の総額が1万円未満の場合
- 自己が売却した物品を売却した相手から買い受ける場合
ただし、次の物品に関しては上記の例が生きては適用されず、確認義務を負います。
- バイク、原付及びそれらの部品
- ゲームソフト
- CD、DVD
- 書籍
確認方法としては、相手方に面前で、氏名、住所、職業、年齢を記載してもらい、運転免許証等の身分証明書を提示してもらいます。
あらかじめ書いたものを受け取るのではなく面前で記載してもらいましょう。
運転免許証等はコピーを取らせてもらった方がより確実です。
上記は対面での取引の場合ですが、非対面の場合は簡単ではありません。
非対面の場合の相手方の確認方法としては以下の記事をご確認ください。
取引の帳簿への記録の義務
古物商は、取引した物品の中に万が一不正品や盗品があった場合に、その履歴を追うことができるよう、取引の記録を帳簿等に記載しておかなければなりません。
次のような取引のとき帳簿への記載が義務付けられています。
- 古物の売買
- 古物の交換
- 古物の売買又は交換の委託
記載しなければならない事項は次のとおりです。
- 取引の年月日
- 古物の品目及び種類
- 古物の特徴
- 取引の相手方の住所、氏名、職業、年齢
- 取引相手の確認方法
記録する方法は、紙に手書きでもいいですし、コンピュータ^によるものでも構いません。
また、同じ相手からの2回目以降の取引の場合は、氏名の記入だけで他は省略できます。
帳簿の記録にも例外があります。
次のような場合は記録する必要はありません。
- 買受け又は売却の対価の総額が1万円以下の場合
ただし、次の物品に関しては、1万円以下でも記録義務が課せられています。
- バイク、原付(部品含む)
- ゲームソフト
- CD、DVDソフト
- 書籍
また、中古自動車を売却した場合には、相手方の氏名、住所は記録する必要はありません。
自動車には、法律上の登録制度があるためそれにより特定することができるからです。
帳簿の備え付けと保存の義務
上に記載した帳簿は事務所に備え付けておかなければなりません。
コンピューターにより作成し、保存している場合は、必要に応じてすぐに表示できるようにしておかなければなりません。
保存期間は、記録してから3年間です。
また、帳簿が紛失、き損した場合は、警察署に届け出なければならないという規定もありますので注しましょう。
不正品の疑惑の申告義務
古物商は取り扱う古物が不正品、盗品である疑いが生じたときは、直ちに警察にその旨を申告しなければなりません。
取り扱う古物は、常に注意して確認しなければならず、管理者は適切な営業を行うための責任者として、盗品や不正品を見抜く目を持つように努めなければなりません。
古物に対する見る目を必要ですが、人を見る目が重要になる場合もあります。
また、会費は必要ですが、防犯協会に入会すれば、盗品に関する情報が入ってくることがあります。
日頃から情報収集に努め、犯罪者の片棒を担ぐことにならないように注意しましょう。
警察への捜査の協力義務
警察に対する捜査の協力としては次の2つがあります。
- 品触れ
- 差し止め
品触れ
品触れとは、警察が盗品の発見のために、古物商に対して被害品の通知し、その有無の確認と届出を求めるものです。
古物商としては、品触れの書面を受け取ったときは、その書面を6か月間保存し、記載されている古物を所有していた李、又は、持ち込まれたりした場合は直ちに警察に届け出なければなりません。
差し止め
差し止めとは、警察が古物商に対して、盗品の疑いがある古物について、一定期間の保管命令を行うことです。
差し止められた古物は一定期間、売却することはできなくなります。
名義貸しの禁止
名義貸しとは、自己の名義で、他人に古物商を営ませることです。
これは許可を得ていない者に古物営業を行わせることになりますから禁止されて当然です。
最後に、上記ルールに違反した場合等の罰則を確認しておきましょう。
古物用が法令違反した場合の罰則
古物商が法令違反をした場合の罰則について、重たい罰則から確認していきましょう。
3年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 許可を受けないで古物商の営業を行った者
- 偽りその他不正の手段で古物商の許可を受けた者
- 名義貸しを行った者
- 公安委員会の営業停止命令に背いて古物商の営業を行った者
1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 営業所又は取引の相手方の住所又は居所以外の場所で古物の取引を行った者
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
- 届出なしで、仮設店舗で古物営業を行った者
- 取引の相手方の真偽を確認しなかった者
- 帳簿を3年以内に破棄した者
- 品触れに相当する古物について警察に届け出なかった者
- 必要な帳簿をつけていない、もしくは虚偽の記録をした者
- 帳簿が紛失または既存したとき警察に届け出なかった者
- 品触れに関する書面に日付を記載せず、または保管しなかった者
- 差し止めの命令に違反した者
20万円以下の罰金
- 古物商許可申請書、添付書類に虚偽を記載して提出した者
- 競り売りをしようとするとき届出をせず、または虚偽の記載をして提出した者
10万円以下の罰金
- 行商をするとき、許可証を携帯しなかった者
- 営業所の名称、所在地を変更するときあらかじめ必要な届出をしなかった者
- 古物商の氏名、住所、取り扱う古物の区分、管理者を変更したときに届出をしなかった者
- 古物商の氏名、住所、取り扱う古物の区分、管理者を変更したときに虚偽の届出をした者
上記の罰則の中で、許可を受けないで古物商の営業をした者は、欠格要件に該当し、新たに許可を取ろうとしても5年間は許可を取ることはできません。
また、名義貸しや営業停止命令に違反した場合は、許可の取り消しとなり、この場合も欠格要件に該当します。
面倒であっても、適切にルールを守ることが、事業の安定にも繋がることになると思います。
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